雪が解けて川になって流れて行きます

関係ないとは言いつつも、職場でのバレンタインの挨拶もそこそこに、さっさと帰って来ました。社交辞令くらいはしとかないとね。薔薇マリーです。

今日は、朝から非常に眠く、一日中眠気が付きまとう一日でした。そして、思いつきのネタを。
エロゲーのOP風に読んで頂けると、幸いです。

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俺は「須藤健吾」。彼女居ない暦19年の、毎日大学にバイトにと、惰性の毎日を過ごしているただの青年だ。

しかし!今日は、そんな俺にも心がウキウキしてしまう、そんな魔法の日。

「バレンタイン」

実は何も無いとはわかっていつつも、何かあるかもと期待してしまうのが、男というものなのだ。
もちろん、俺もその例に漏れる訳ではない。

いつもより軽い足取りで、駅へと向かう。もしかしたら、駅で「いつも見てました!」なんて言われて、見ず知らずの女の子から、チョコレート渡されたりしないかなー。なんて、寝ぼけた事を考えていたりする。朝の冷たい空気さえも、今日はすがすがしい。でも、それがバレンタインってものだろ?

駅へ到着。
いつもの時間、いつものホーム、いつもの乗降口にて電車を待つ。当然、駅で声を掛けられるなんて事はない。第一、大学で、もしかしたらもらえるんじゃないか…と考えが移っている。
いいじゃないか、夢見るだけなら、ただなんだから。

「あの、すみません…」

…ん?何やら声がする…。ま、まさか!もしかして、もしかしてっ!
俺は、内心自分でもびっくりするぐらいの動揺をしていたのだが、あくまでも平静を装いゆっくりと振り返る。
と、そこには。

小柄な、子猫のような目をした少女が、その両手で大事そうに、派手な包み紙に包まれた箱を持って立っていた。
見たところ、高校生らしい。顔を真っ赤にして、周囲の視線がいくばくか集まる中、今にも逃げ出しそうな表情をしている。
正直、可愛いと思った。でも、この娘を、俺は知らない。
しかし、電車でいつも見かけてて…。万が一。万が一と言う言葉があるではないか!

「…あの、いつもずっと見てました。須藤健吾さん、これ、あたしの気持ちです!もらって下さい!!」

緊張で、言葉は途切れ途切れになり、早く言ってしまおうと、まくし立てるように彼女は言葉を紡いでいく。

「………きっと、あたしの事なんて知りませんよね?……でも、あたしは貴方の事を知ってます………」

実は俺も、内心気が気でない。
と言うか、「もしも〜だったらなぁ」は、起こらないからこそそんな想像が出来るのであって、実際に遭遇するとどうしようもない。
俺の頭の中は、フリーズしかけていた。

「…あたし、貴方の事何でも知ってます。……名前、住所、年齢、携帯電話の番号、メールアドレス、好きな食べ物…、貴方の癖、貴方のよく使う暗証番号、貴方の性癖…」

「………………………………は?」

完全に頭がフリーズする。いくら、初めての自体で混乱しているとはいえ、今の彼女の発言がおかしい事ぐらいは、かろうじてわかる。それに、俺は彼女の事なんて全く知らないのだ。

「突然でびっくりされるのも当然ですよね……。ごめんなさい」

「え、あ、いや、……その…」

「あたし、貴方の事が好きです。…電車で、あたしが痴漢にあっているのに気付いてたのに、全く助けてくれなかった。助けようと思ってるのに、その勇気がなくて怯えていた、貴方が好きです!」

「……………」

「だから!これ!貰って下さいっ!」

そう言って、彼女は俺にその手に持っていた箱を、俺に押し付けるように渡すと、ぱたぱたと逃げるように走って行った…。
周囲の視線が気になるなか、俺は平静を装って、ちょうどやってきた電車へと乗り込む。

そして、ガタゴトと揺れる車内で、今の情景を思い描いていた。
…えーっと、あれ?何かがおかしい。だんだん冷静さを取り戻して行くのがわかる。
彼女は何と言った?
教えてもいないのに、言葉を交わしたのが初めてのはずなのに、電話番号やメールアドレスを知っていた。…俺の性癖まで知ってると言った。


それが、俺と彼女、亜繰沢亞来(あくるざわあくる)との二度目(?)の出会いだった。

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こんなエロゲー、誰か作って下さいな。
で、主人公はこの後、大学やバイト先でも、似たようにチョコレートを渡される。そのどれもが、主人公の知らない女の子。
そんな、ストーカーされるエロゲー。ある意味、生き残りゲー。